夏の富士登山といえば、おおかた、そこそこの山の頂に近い５合目まで、車やバスで一気に駆け上がる。森林限界を超えたところから、高度に順応する間もなく、いきなり歩きはじめる。しかも、大抵、暗くなって、歩きづらい火山礫、溶岩の登山道を、行列になって登る。途中の山小屋で仮眠して、未明にまた歩き始める。登山道は、大渋滞。やがて天候に恵まれれば、山頂でご来光というクライマックスを迎える。こんな登り方が夏富士の定番になっている。

頂上でも富士銀座と呼ばれるほどの人ごみの中、眠たく、寒く、高山病で頭が痛い。水場や樹林の潤いは無く、溶岩と砂ぼこりにまみれた苦行の山登り。「やった！」と日本一の山にふさわしい達成感と晴れれば日の出の感動はあるものの、二度登る人はバカということになるらしい。(江戸時代から、登山が容易でないことと、金ばかりとられて、富士山に二度登るバカといわれていたという)

そもそも、なんで、こんな偏った登り方が幅をきかせているのだろう。確かに山頂から見る日の出の景観はすばらしい。しかし、日本の最高峰に、かくも体に厳しく、味気ない方法で登るなんて、何かおかしい。富士山の良さを満喫できる、中腹の見事な樹林や高山植物を省略するなんて、もったいない。