大砂走りを降りる、これぞ夏富士の愉しみ

吉永 厚子 耕一  








2004年の夏富士


富士登山の愉しみに大砂走りがある。底知れず堆積した砂礫の下山道を飛ぶように走り降りる。一歩で数メートル。まるでMoon Walk ? この快適さはたまらない。

降りの時間が短縮でき、体にやさしい。膝に爆弾を抱えた人には特にありがたい。中腹の樹林帯から頂上をめざす富士登山を1シーズン数回やるなら大砂走りを利用しないてはない。

もともとどの登山口の下山道にも砂走りがあった。下山後は、山小屋での砂払いが定番であったらしい。現在は、須走り口と御殿場口にある。吉田口は、1980年の落石事故以来8合目から吉田大沢へ降りる砂走り下山道は通行禁止となった。富士宮口にも8合目から下山道があり、途中から砂走りになっていた。この下山道も今はない。

なかでも、とっておきは御殿場口の大砂走り。

御殿場口7合目から登山道と別れて大砂走りが始まる。砂が靴に入らないように下ごしらえをしていざ出発。下り始めは、ところどころに岩もでているので、まず足慣らしのつもりでゆっくりくだる。スキーのスケーティングのようにして降るのもいい。走り6合の小屋跡を過ぎ、右手に宝永火口の馬の背を見るようになると、砂礫も細かくなり走りやすくなる。

宝永の大爆発で堆積した底知れぬ砂礫は素晴らしいクッションを提供する。、宝永山の傾斜も強まって、まさに一歩で数メートル飛ぶようにして降りていく。ダッ・ダッ・ダッとあっという間に、旧2.8合の気象台非難小屋に到着する。

大雨の後だろうか、砂が結構締まっているときがある。こんなときは、表面が硬く、転倒しやすい。足跡を伝って降りるか、走り降りるのを控えることも必要。2004年夏は、こんなコンディションが多かった。

大砂走りの御殿場口新5合目から御殿場行きのバスが出ているが便数が少ない。富士登山の交通アクセスを考えると、大砂走りを愉しむにはマイカー利用がよい。御殿場口は他の登山口と違い、登山者の利用も少なく、広い駐車場もある。

ただ、御殿場ルートの登り口は、宝永の噴火の影響で既に森林限界を超えている。樹木の殆どない、この砂の登山道を毎回往復するのも味気ない。正直飽きてしまう。

御殿場口新5合目の駐車場を拠点にして、変化のあるコースを登って富士山頂に至り、下りは必ず大砂走りを駆け抜けるルートをたどった。(2004年)。







株式会社エアロ・フォト・センター画像データ提供、カシミール 3Dにて立体風景図作成.





1)御殿場口往復

御殿場口新5合目(1440m)を出発し、初めから終わりまで砂礫と溶岩の登山道、下山道をトレースする。大賑わいの吉田口や富士宮口と違い、このルートを利用するのは数えるほどの登山者なので、静かな山登りが楽しめる。

この登山口は富士登山駅伝のコースとなっており、7月初め山開きか8月の初めにかけては、多くの駅伝ランナーが信じられないスピードで上り下りしている光景を目にする。

ちょっとした、バリエーションとして御殿場口7.8合あたりから西側へ水平にトラバースし、富士宮口8合目に移動し頂上を目指すこともできる。


2)御殿場口新5合目-須走り口新5合目-吉田口頂上-御殿場口頂上-御殿場口下山

御殿場口新5合目の駐車場から、東方向へ少し下った広場から、須走り口新5合目(2000m)へブルトーザー道を斜上する。宝永爆発で広がった火山荒原の景観もよい。初秋には、大輪の富士薊群落の開花が素晴らしい。

初めは、ほぼ水平に歩く。山頂の富士山測候所に電力を提供している富士測の電線が横切る辺りから傾斜が増す。他の富士登山ではお目にかかれない富士の輪郭を見る。比較的大きな沢を超える。この沢の上流には、雪解けの季節だけに現れる幻の滝がある。

須走り口新5合目から吉田口頂上までは、須走り口の登山となる。樹林となだらかな登りやすい登山道だ。富士銀座とまでいわれる吉田口頂上からお鉢めぐりのルートを西進する。大日岳直下は、崩落が激しく金網が続く。成就岳、賽の河原を過ぎて、銀明水にでると、ここが御殿場口頂上。


3)御殿場口新5合目-双子山-宝永第3火口-富士宮口新6合-富士宮口頂上-御殿場口頂上-御殿場口下山

新5合目駐車場西側から双子山ハイキング・コースを辿る。双子山の鞍部から須山口下山道2合目を横切り、火山荒原の道をさらに西進する。樹林帯に入りやがて宝永第3火口にでる。ここが樹林限界。宝永火口の西の縁を登って富士宮口新6合にでる。

富士宮口は、溶岩の岩盤が露出した急斜面の道だが、しっかりとした足場で登りやすい。最後の急登をつめて、浅間大社奥宮の富士宮頂上にでる。東に数10メートル行くと銀明水の御殿場口頂上にでる。


4)御殿場口下山道

大砂走りは、通常7合目日の出館まで下り、そこから下山道に入っていく。大砂走りのルートは、午後よく雲がでる。ガスって周りの景色が確認できないときはこのルートで降る。ロープが張られており、所々に道しるべの木柱が続くので、これに沿って降りる。

初めて富士山に登った人が、大砂走りの下山道からそれて、東進し道に迷ったケースがある。特に、山終いした季節は、お天気が良くても踏み跡も少なくなるので注意が必要。

お天気に恵まれれば、7.5合の砂走館の下、ブルトーザー道の鉄柵から宝永火口の東の縁を降りる道を利用できる。岩が多いが砂走りを楽しめる。さらに宝永火口の岩脈・十二薬師を間近に見ることができる。宝永火口へ降り富士宮口へ向かう道と別れ、東に下ると直ぐに大砂走りに合流する。



7月3日(土)
御殿場口 新5合(1440m)-御殿場口7.8合-富士宮口8合-富士宮口頂上-剣が峰-御殿場口頂上-大砂走り-新5合

7月17日(土)
御殿場口 新5合-御殿場口7合-大砂走り-新5合  

8月21日(土)
御殿場口 新5合-御殿場口頂上-剣が峰-御殿場口頂上-大砂走り-新5合

9月4日(土)
御殿場口 新5合-御殿場口頂上-剣が峰-御殿場口頂上-大砂走り-新5合

9月18日(土)
御殿場口 新5合-須走り口新5合(2000m)-吉田口頂上-御殿場口頂上-大砂走り-新5合

10月16日(土)
御殿場口 新5合-双子山-富士宮口新6合-富士宮口頂上-剣が峰-御殿場口頂上-大砂走り-新5合

11月6日(土)
御殿場口 新5合-御殿場口頂上-剣が峰-御殿場口頂上-大砂走り-新5合    7.8合目以上氷雪

    






樹林帯から、日中歩いて登る、これぞ夏富士の愉しみ






Last modified 2/1/2005

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